前骨間(ぜんこっかん)神経麻痺
前骨間(ぜんこつかん)神経麻痺とは
親指と人差し指の第1関節が麻痺し、曲げられなくなる症状を前骨間神経麻痺といいます。
写真の患者さんは親指の第1関節を曲げることができません。親指がまっすぐに伸びているのがわかります。この形が涙のしずくに似ていることから涙のしずくサインと呼ばれます。
発生の頻度は手首の麻痺である橈骨神経麻痺や指を伸ばすことができなくなる後骨間神経麻痺と比べるとかなり少なく、麻痺の範囲が第1関節のみに限定されるため、不便ながらもそのまま使っているという方も一定数いらっしゃると思います。
当院での受診者数も年に1.2名、25年以上の臨床経験でも20名と非常に少ないです。橈骨神経麻痺が7.000件以上、後骨間神経麻痺が3.000件以上と比べるといかに少ないかが分かります。
動画で見ていただいたほうがわかりやすいですので、下記の動画もご参照ください。
前骨間神経とは、屈筋側の神経を支配する正中神経から枝分かれしたものが前骨間神経でちょうど肘のあたりで分岐をします。この分岐後の神経=前骨間神経が麻痺してしまった状態が前骨間神経麻痺ということになります。
第1指と第2指で〇を作れない(第1関節が曲がらない)、なみだのしずくサインがあり、感覚障害がないと前骨間神経麻痺と診断されます。整形ではX線(レントゲン)や場合によってMRI検査が行われることがあります。
20症例ですので、はっきりしたことを申し上げられるだけの経験はありません。まだわからないことも多いのですが、根気よく諦めずに施術していけば、感触として、まったく改善しないことはないなという手ごたえは感じています。この点も後骨間神経麻痺と似ています。
伸筋で感覚繊維がなく、運動神経だけの後骨間神経麻痺(原則しびれなどの感覚障害はない)、その裏返し、屈筋で感覚繊維がなく、運動神経だけの前骨間神経麻痺(原則しびれなど感覚障害はない)は、いずれも肘で分岐した神経、運動繊維だけ(感覚神経はない)、自然発症が多い、治りにくいなど後骨間神経麻痺と共通項が多い印象を持ちます。
難治性が多い前骨間神経麻痺
手首の麻痺である橈骨神経麻痺の場合、軽度なものですと、自然に治癒していくものが一定割合ありますが、前骨間神経麻痺の場合、この割合が少ないと思います。また、回復に時間を要するものが多くこの点も後骨間神経麻痺と一緒です。どれぐらいでよくなるかの?予測ができません。少しずつ、改善していく場合が多いので、状態をみながら根気よく取り組んでいく必要があります。
前骨間神経麻痺発症の原因
はっきりとした原因がわからないものが多いです。一部の患者さんで最初に肘周囲の痛みを訴え、1週間ほど痛みが軽減したころに指が曲がらなくなったという発症の仕方をする場合がありますが、なんも前兆もなく、おかしいなと思っているうちにだんだん動かなくなったというケースもありますので、必ずしも共通する発症の仕方があるわけではありません。この点は指が伸びなくなる症状の後骨間神経麻痺の発症の仕方と非常によく似ています。
前骨間神経麻痺の施術
症例数が少ないので、まだわからないことも多いです。いままで拝見してきた感じでは、基本的に時間がかかる、でも全く改善しないものは少ないという印象です。
この麻痺の場合、親指と人差し指の第1関節の麻痺に限定されますので、橈骨神経麻痺や後骨間神経麻痺に比べると、不便ながらも日常生活はなんとかなるという方が多いと思います。
ただ、指先の器用な動きが要求される職業(楽器を弾くなど)の場合、なんとか少しでも改善させないと困るというケースもあると思います。
お困りの方はご相談いただければと思います。