撓骨神経麻痺の診断
当院に橈骨神経麻痺でお越しになるほとんどの方は、整形を受診されたあといらっしゃいます。多くの患者さまから病院や整形での対応を聞いてきましたが、橈骨神経麻痺と診断されるまでの経緯は受診した時の医師によってかなり異なります。
経験の豊富な医師に当れば、発症した状況の問診だけで診断がつきます。この場合、レントゲンやMRIなどの検査をせず、「橈骨神経麻痺」の診断を貰っていますので、患者さんにとってはもっとも負担のない理想的なケースでしょう。
一方、レントゲンやMRIなどの検査後に「橈骨神経麻痺」と診断されたという話も多くの患者さんから伺います。このケースでは、必要ない検査と費用が余分にかかってしまいますが、健康診断を受けたと考えれば、いいのだと思います。とにかく、「橈骨神経麻痺」という診断をもらうことが大切です。
メチコバール(ビタミンB12)を処方されます
軽度な麻痺であれば、ビタミン剤を飲んでも飲まなくても自然に治癒していくものも多数あります。ビタミン剤は気休め程度に考えておいたほうがいいと思います。「時間がたてば、自然に治る」といわれることが多いと思います。これは間違いではないのですが、「自然に治らない」ものもありますので、軽度~重度まで「すべて一律に自然に時間がたてば治るんだ」と思わないことが大切です。2週間ぐらい様子をみるのはいいですが、それ以上様子をみて治らないまま時間だけ経過してしまうのは問題です。治りそうか自然治癒は無理そうかの見極めを誤らないようにすることがとても大切です。
1ヶ月ぐらいしてから慌てて当院に駆け込んでいらっしゃる患者さんが多くおられます。なぜ1ヶ月も空いてしまうかというと、病院で1ヶ月分のビタミン剤B12(メチコバール)を処方され、次は「1ヶ月後に来てください」と言われたり、筋電図の検査が数週間先であったり、「自然に治る」と言われたことを信じて過ごしているうちに、発症後の一番大事な時期を無駄に過ごしてしまうことになります。1ヶ月位ならまだいいですが、半年とか1年近くもたってからご相談を受けることも珍しくありません。
軽度の橈骨神経麻痺は自然に治っていくものもあります。治りそうであれば、様子をみながら自然治癒を待てばいいと思います。しかし、中程度以上のものになりますと、自然には治らないものもありますので、注意が必要です。
ネットで橈骨神経麻痺の闘病記を紹介しているページをちらほら見かけます。ご自分の体験をもとに「時間はかかっても必ず治る」などと無責任なことが書かれていますが、それはその方ひとりの症例であって、その体験談を鵜呑みにすべきではありません。
長年、橈骨神経麻痺の症例を数多く診てきましたが、適切な施術を受けなかったために、「結局治らない、完全には治らなかった」というケースを多く見てきました。少しでもよくなればと、施術のご相談を受けますが、なかなか効果が出ずに、お役に立てないケースが多くなるのが、発症後時間がたってしまった橈骨神経麻痺です。橈骨神経麻痺の後遺症のページで橈骨神経麻痺が治らなかった方のケースを紹介していますので、ご覧ください。
治りが悪いと感じたら、なるべく早くご連絡ください。
橈骨神経麻痺はすぐに施術を始めれば、治しやす症状です。発症直後なら、1ヶ月施術を続ければ、かなり改善します。1ヶ月以上施術を受けても改善の実感が感じられなければ、それは治療法が適切ではありません。治療法がないということはありません。適切な施術を受ければ、それだけ早く治ります。
麻痺の施術はひとつこれをすれば、治るというほど簡単なものではありません。治していくのに絶対に欠かせないポイントを含め、複合的な施術法、長年のノウハウがありますので、ここでご紹介できるものではありませんが、麻痺後、すぐに施術を始めれば、数回の施術で改善(変化)を実感できます。
1回、2回の施術で「治る」のもではありませんが、施術を受けると、施術後、少しよくなったという実感が必ず持てます。この実感がとても大切です。なぜなら、この先、数ヶ月続く治療に1回ごとの効果が感じられなければ、続けられないからです。
地道な治療を積み重ねていくと、最初はわずかな実感だったものが、明らかに手の動き、しびれの減少、握力の改善など、目に見える改善が出てきます。
「ぱっとすぐに治る」ものではありません。しかし、施術を積み重ねて行けば、発症後、1.2週間以内の橈骨神経麻痺は、とても治りやすい症状です。また施術を受けたほうが、ただビタミン剤を飲んで待つよりも、はるかに早く改善が進みます。
重度のものはしばらく時間をいただかないとなりませんが、それ以外の麻痺は数回の施術で効果が実感できるのが普通です。1、2回施術を受けていただけば、論より結果でお答えしようと思います。
橈骨神経麻痺固定具(シーネ)について
整形外科によってはビタミン剤の処方と麻痺手を固定具で固定する場合があります。
固定をすると、手首が安定しますので、利き手の麻痺の場合は多少使い勝手が向上するというメリットがあります。しかし、骨折などの場合と違い、固定したから治療になるというのとは違います。
骨折の場合は、骨が折れた部分が動かないようにしっかりと固定します。なぜなら、骨折面が動くと骨がくっつかないからです。骨折は、固定=治療になりますが、橈骨神経麻痺は骨が折れているわけではありません。固定は使い勝手を改善させるための補助具ぐらいに考えておくべきです。
橈骨神経麻痺の場合は、まずなによりも、少しでも動くようにする、そして残存の能力内で無理なくリハビリを開始するというのが、基本です。当院では固定の処置は原則おこないませんが、以下の場合、軽く固定や手首のサパーターを利用する場合があります。
1 麻痺の程度がひどく、手首が屈曲側に大きく曲がってしまうとき
2 仕事上使い勝手を少しでも向上させたいとご希望があるとき
固定をした場合でも、一日中固定したままではよくありません。最低限必要なときだけの補助具として考え、必要ないときははずし、手首を自由な状態にして、不便ながらも使い、動かすことがリハビリになり、回復への道筋に繋がります。