手の痛み・しびれ
手の痛み・しびれの症状
しびれはからだのどこかで神経への障害があると起こる症状で様々な原因が考えられます。内科的な問題、脳の問題や背後に重篤な病気が潜んでいる場合もありますので、一度病院で検査をされ、異常がないことを調べてから治療を受けられることをお勧めします。
病院で検査をしてどこにも異常がない、原因がわからないと、当院にお越しになる患者さんで一番多いのが、筋肉の問題や骨の歪みを原因としたしびれや痛みの症状です。
体に分布するほとんどの神経は骨と骨の間に出来る椎間孔という狭い空間を通って隅々まで分布します。神経は筋肉の中を通っているわけですからもっとこれらの問題に目が向けられるべきだと思います。
原因がわかならいと来院される患者さんを拝見すると、神経の出口の部分での筋肉のひどいこり、骨のわずかな歪みなどから起きているのではと推測できるものが多くみられます。
神経の周りには筋肉などの軟部組織があります。その中を縫うようにして神経が走っているのですが、周りの筋肉が硬くなると、神経を締め付けるような状態になります。骨のわずかな歪みは、神経の出口(椎間孔)の部分を狭め、神経の流れを悪くします。
ホースなかに水が流れている状態イメージしていただくとわかり易いかもしれません。ホースが筋肉、中を流れている水が神経です。筋肉であるホースが硬くなると、弾力性がなくなり、外側から内側に押すような状態になります。すると、なかの水の流れが悪くなります。また神経の出口である椎間孔は骨と骨の間にできる空間なのですが、この空間のなかを神経が通ります。骨の歪みからこのホースがねじれるような状態になるとやはり水(中を通っている神経)の流れが悪くなります。
しびれとは神経伝達が順調に流れていない状態、よどんでいる状態といえます。
しびれにはいろいろな感覚があります。ぴりぴり、びりびり、ちりちり、水が皮膚を滴るような感覚、冷たい感覚、虫が這うような感覚もしびれの一種です。また、感覚がないようなしびれは注意が必要です。
手のしびれ・痛みの原因
手のしびれ・痛みの原因箇所はいろいろありますので、まずどこが原因かの特定が大切です。手のしびれを起こす病名としては、胸角出口症候群、頚肩腕症候群、頚部椎間板ヘルニア、頚椎の脊椎の問題(脊髄症)、頚椎症、頚椎後縦靭帯硬化症、肘部管症候群、手根管症候群などがあります。
このうちMRI、レントゲンで鑑別診断がつくのは、頚部椎間板ヘルニア、頚椎の脊椎の問題(脊髄症)、頚椎症、頚椎後縦靭帯硬化症です。
一方、胸角出口症候群、頚肩腕症候群、肘部管症候群、手根管症候群などの最後に”○○症候群”とついている病名は、「特定の原因がはっきりしないものを、おそらくその周囲の問題でしょう」と”群”と言う言葉で括った病名です。
すなわち”○○症候群”というのは、原因がはっきりしていない、特定されていない病名と言えます。特に手のしびれではこの○○症候群を診断されてみえる方が非常に多いです。
このようにみてきますと、手のしびれ・痛みの症状には、以下の3つ、1 はっきりと原因が特定されているもの 2 あやふやなもの 3 原因がわからないものにわかれてくることがわかります。治療をしていくときには、この3つを当然区別して考えていかねばなりません。
- しびれの原因がはっきりしている(頚椎椎間板ヘルニアなど)
- ○○症候群というあいまいな病名
- しびれの原因がわかならい
2に関しては、「ほんとうにそれらが原因なのか?」と疑うところから始めます。3については、原因をまず探すというところから始めなければなりません。
いろいろな病名はついていても、「とりあえず、それは置いておいて」というスタンスで治療を始めなければなりません。
なぜなら、当院にいらっしゃる患者さんは、病院や整形に受診して、治らずにいらっしゃるわけですから、それらの診断にこだわっていては治療になりません。
「原因がはっきりしない」、「○○症候群」などの患者さんを拝見していて、臨床的に多いのは、前述した筋肉の硬結による絞約(硬くしめつける)です。
特に手のしびれは、筋肉の問題が非常に多いと感じています。
「筋肉からしびれ?」と、多くの方が思われると思いますが、筋肉に関しては、病院で指摘されることはまずありません。病院では検査が中心ですから、当たり前すぎて誰も目を向けない筋肉に問題が見つかることが多くなるわけです。
頚椎の出口の部分での筋肉の問題はないか、肩や肩甲骨まわり、首の筋肉のひどいこりはないか、次の可能性として、鎖骨の下の斜角筋の問題、次の可能性として、肘部分の問題(肘部管症候群)や手関節部分の問題(手根管症候群)というようにひとつひとつ可能性の高い順から治してみるというのが基本です。
一般的にしびれの治療は治るのに時間のかかる症状です。
手のしびれ・痛みの施術
手のしびれのところで3つに分けられるの述べましたが、治療に際してはこれをふたつに分けて考えます。
しびれ・痛みの原因がはっきりしている場合
頚部椎間板ヘルニア、頚椎の脊椎の問題(脊髄症)、頚椎症、頚椎後縦靭帯硬化症などがこのケースです。
これらの病名と診断されている場合、その病気の程度によって、治療で症状が改善できるか、できないかが大きく左右されます。たとえば、重度の頚部椎間板ヘルニアは、脊柱管(神経の通り道)に物理的な障害がありますので、難しいケースが多いです。
一方、頚椎の脊椎の問題(脊髄症)、頚椎症、頚椎後縦靭帯硬化症などの診断がついている場合、人間の体が、急に昨日、今日からこういう状態になる訳ではありません。それは、長年の積み重ねの結果、頚椎に変形を重ねてきた結果と考えるべきでしょう。
もし今までの間、たとえば、この10年、特になんの症状もなく過ごしてきたのに、1週間前から症状が出て、頚椎症と診断されたとしたら、「いままでもこれでやってこれたのに、なんで急に1週間前から症状が出たの?」と考えるのが普通だと思います。この場合、治療の目標は、症状が出る前の1週間前の状態に戻してあげられないかということになります。
このように原因がはっきりしているものの中でも、治りにくいもの、なんとかできそうなものとわかれてきます。
○○症候群と診断された、はっきりした原因がわからない場合
患者さんの割合としては、こちらの2番で来院される方が全体の7割り程度です。
だいたいの方が病院で検査後来院されますので、内科的な問題でもなく、特に悪いところもない、しかし、しびれや痛みがとれないという状態です。
こういうケースでは、レントゲン、MRIなど画像上では異常はないことを踏まえた上で、目では見えないところ、骨格的な骨組みの問題や触らないとわからない筋肉の問題などに原因はないかを疑わなければなりません。
「どこに原因でありそうか?」「しびれの原因になりそうな部分はないか?」を探すことがまず治療の第一歩です。
多くの場合、拝見してみると「たぶんここがしびれの原因ではないかなぁ」と推測できることが多いのですが、それは何の原因もなく、しびれるということ自体がおかしいからです。
どこかにその原因があるはずだと考えれば、病院では考えないところ、筋肉や骨格的な問題に原因部分が見つかる確率はかなり高いということになります。
筋肉の問題、骨格的な問題、からだのバランスなどにも現代医学がもっと目を向ければ、原因がわからずに病院を転々とされる患者さんはかなり減るはずです。これはしびれ症状に限らず、腰痛、坐骨神経痛、めまい、頭痛など適応症にあげてある多くの病気に共通することです。
しびれの症状は治りにくい、時間のかかる症状ですが、その症状もさることながら半分はなにが原因でしびれるのかわからないという不安感です。多少時間はかかっても治療によって症状がとれてくると患者さんは「ああこれが原因だったんだ」と納得していただけますので、そこまでいけば半分は成功です。
どこかおかしいところ、異常なところを見つける、そして治してみる、その結果、症状が好転しないか、その結果を検証していく地道な作業とそれなりの期間が必要なのがしびれの治療です。
症状が出てから時間が経つほど治りにくくなりますので、早めの施術を心がけて下さい。