体は急に悪くならない
2019/08/11| カテゴリー:臨床奮闘日記
超久しぶりの臨床奮闘日記です。
日々いろいろな患者様を拝見していて、常々思っていることですが、体は突然悪くなったりしません。
当院で適応症として扱っているなかで唯一突然といえるものは、交通事故ぐらいだと思います。ただこれは外傷(怪我)ですので、他の症状とは種類が違います。
たとえば、皆さんが急に悪くなると思っているぎっくり腰。「ぎっくり腰は?突然痛くなるでしょ」と思うかもしれませんが、重いものを不用意に持ち上げたケースを除けば(これも一種の外傷に近いです)、発症以前からの腰の問題が前提にあり、負担が積み重なって、その負担が限界に来た時にちょっとしたきっかけで痛みが強く出たのであって、急に悪くなったわけではありません。
「なにもしていないのに急に痛くなった..」「ちょとした物を取ろうとして手を伸ばしたら..」「朝顔を洗おうとかがんだら..」「くしゃみをしたら..」「呼ばれて後ろを振り向いたら..」こんななんでもないことで急に激痛が起こり、歩くことも出来ないなんてことになるはずはありません。
ただほとんどの患者さんはなった原因を探そうとしますから、「あのとき、あれをしたからなった」と丁寧に説明してくれますが、それはただの「きっかけ」、ほんとうの原因は以前からの問題の蓄積であり、たまたま「きっかけ」を境にして痛みが出たに過ぎません。なるべくしてなった、その「きっかけ」がなくても、ほかの些細なことで発症しますし、「なんにも思い当たることがない」ような発症の仕方も十分あり得るわけです。
なぜなら、以前から悪いから。
ここまで説明して以前の状態を振り返ってもらうと、「以前から腰の調子は悪かったんです」という方と「調子悪いなんて思ったこともない」という方がいらっしゃいます。前者の場合、「以前からの問題の蓄積が今回のぎっくり腰の原因ですよ」と説明してあげれば、納得しやすいですよね。しかし、後者ですと、「いまひとつ府に落ちない」という感じの患者さんもいらっしいます。
これは少しわかりずらいとは思いますが、「もともと痛みへの耐性が強い人」、「常に緊張感や充実感を持って生活している人」、「以前は調子が悪い時期があったはずなのにそれに慣れてしまって感じなくなってしまっている人」などにざっくりとわけられると思います。
一番多いのは痛みに慣れて鈍感になってしまっているケースでこれは最近いわれている「隠れ疲労」に近いものがああります。
肩こりなどを例にすると少しわかりやすいでしょうか。「以前はすごく凝っていたの最近はそうでもない」こういう方は慣れてしまって自覚できなくなっている、不調のセンサーの感度が鈍くなっている可能性が高いです。
本人も「慣れてしまって感じないだけかもしれない」と薄々わかっていらっしゃる方も多いです。人間はずっと悪い状態にあると、それに慣れてしまって分からなくなってしまうのです。
人間の体はほんとうによくできています。ですから調子が悪くなっているときは、いろいろなシグナルを送ってくるのです。そのシグナルを見逃さないようにしてください。
腰だけに限った話ではなく、「最近やけに肩が凝るなぁ」「背中のはりをよく感じるなぁ」「足がよくつるようになったなあ、以前はそうでなかったのに..」「寝違えることが多いなぁ」「なんで枕が合わなくなったんだろう?前と同じ枕なのに..」「朝起きると手がしびれていることが最近多いなぁ」「時々膝が痛いなぁ..でもたまにだからいいか」などなどさまざまシグナル、不調のサインが来るはずです。それらを見逃さないようにしてくださいね。
初期の段階ではそれらの症状が時々ですが、それがだんだんと気になる頻度が増えてきたら、それは少しずつ慢性化している過程です。あるいはしばらく(半年とか1年とか)気にならなくなって、そのうちにまた同じような症状が出てきたら、それも単に潜伏しているのであって、治ったのではありません。これも慢性化の過程と疑ったほうがいいと思います。
壊れたら困る大切なからだです。自分の体の声に耳を傾けることが、大事に至らないコツだと思います。