橈骨神経は腕に走行している神経のひとつですが、肘の部分で運動神経と知覚神経に分岐します。そのうちの運動神経を後骨間神経と呼ぶ、ここまでは復習です。詳しくは、後骨間神経麻痺のページをご覧ください。
もともとは橈骨神経ですので、橈骨神経麻痺と診断されていても一部後骨間神経麻痺の症状が混在していることもありますし、後骨間神経麻痺と診断されていても普通はないとされるしびれ症状があったり(後骨間神経麻痺は運動神経だけですので、知覚障害はないというのが教科書的には正解)、最初は橈骨神経麻痺であったものが途中から後骨間神経麻痺に変化してしまうなどなどなど、日々の臨床ではきっちりと区別できるものではありません。
「兄弟のようなものだから、いろいろなケースがある」ぐらいに考えておくのがいいのです。
さて、今回の本題、橈骨神経麻痺と後骨間神経麻痺の鑑別の仕方です。
日本整形外科学会様のHPのなかではこんな感じの図が2つ並んでいるかと思います。著作権侵害にならないよう当院オリジナル画像にしてありますが、たいだいこんな感じの図になっていると思います。
上の図が橈骨神経麻痺で手首が上に持ち上げられない(手首関節の伸展障害)にたいして、下の後骨間神経麻痺は個々の指が持ち上げられません(指の伸展障害)。
手首が上がらないのか、指が伸びないのかの違いなのですが、いまひとつわかりにくい部分があると思いますので、動きで見ていくとわかりやすいです。
下の動画をご覧ください。
グーに握った状態でも、パーに開いた状態でも、手首を上に持ち上げることができません。ですので、橈骨神経麻痺。
一方下の動画では、手首は上まで持ち上げることはできるのですが、ここから指を伸ばすことができない。ですので、後骨間神経麻痺。
というふうに区別がつきます。
繰り返しになりますが、もともとは同じ神経です。混在しているケース、途中から変わるケース(この場合、最初は上がらなかった手首が上がるようになるので、治ってきていると勘違いされる患者様が多いです)、ともかくいろいろなケースがありますので、臨機応変に対応していくことが大切です。