橈骨神経は腕に走行する神経で、伸展(伸ばす)という動きを支配しています。この神経が麻痺するということは、理屈的にはこの神経が支配しているすべての神経は麻痺する可能性があるということなのですが、特に麻痺を起こしやすい部分が手首の伸展筋=橈骨神経麻痺です。
よくある症例ではありませんが、橈骨神経麻痺と同時に上腕三頭筋の麻痺を併発してしまうケースが稀にあります。上腕三頭筋も同じ橈骨神経の支配を受ける神経だからです。
なぜ同じ神経支配を受けていて「なぜ手首の伸展筋がなりやすいのか?」わたしはもともとの筋肉の強さと関係しているのではと考えています。
上腕三頭筋は、手首の伸展筋(手首を上にあげる筋肉)に比べますと、比較的強い筋肉です。筋肉にも強い力を発揮できる筋肉とそうでない筋肉があります。手首を上に上げる動きと肘を伸ばす動きを比べてみれば、肘を伸ばす動きのほうが力強く動くのがわかると思います。
椎間板ヘルニアで下垂足の症状が出ることがあります。これは足首を持ち上げる伸展筋ですが、足にはほかにもいつくもの伸展筋があります。そのなかで「どうして足関節に多いのか?」これももともとの筋肉の強さと関連しているのではと考えています。
上腕三頭筋単独での麻痺はいままで2例だけですが、橈骨神経麻痺と併発されたケースで年に数例ほど来院されます。
下の動画をご覧ください。上腕三頭筋は肘関節を伸展(伸ばす)働きをする筋肉ですので、麻痺してしまうと、肘を伸ばして保持していることができません。肘が曲がって落ちてしまうのは、上腕三頭筋の麻痺を意味します。
2箇所が同時に麻痺してしまうと、その驚きも大きいものだとは思います。臨床数が多くないので、はっきりは言えませんが、いままで拝見してきた経験では、上腕三頭筋の麻痺は比較的治りやすい麻痺だと思っています。治療経過を見ていくと、最初に三頭筋の麻痺が治り、次に手首の伸展筋の麻痺が治っていくケースが多いです。