腱鞘炎・ばね指
腱鞘炎について
手首の~前腕の痛みがあると腱鞘炎と診断されることが多いと思います。
腱とは筋(すじ)のことで、この腱を束ねているものが、腱鞘でこの腱鞘とは腱を所定の位置に固定したり、腱が浮き上がりを防ぐ働きがあります。手の指を強く反らしてみるとわかりますが、手の甲側にそれぞれの指に対して、腱(すじ)が浮き上がってくるのが観察できます。この強く浮かんでくる筋が腱です。
それぞれの腱はそれぞれの所定の腱鞘(トンネル)のなかを通ることで、特定の指を動かすことが可能になり、たとえば、中指を上げる、親指を上げるという動きを独立してすることができます。
手や手首の酷使を繰り返すとこのトンネル部分で腱や腱鞘が炎症を起こし、手首や指、前腕部分の痛みを引き起こすのがいわゆる腱鞘炎です。
一般的にもよく聞く病名ですが、これが結構やっかいな問題を含む病名です。なぜなら腱鞘炎と言われていても、実際には「ほんとうに腱鞘炎なの?」と疑うケースがかなり含まれているからです。
腱鞘炎は手の使いすぎによる腱と腱鞘の間の機械的摩擦によって起きた炎症と考えられています。「一日中絵を描いていた」「調理師で一日中フライパンの使っていた」などこれは腱鞘炎を起こしても不思議ではないぐらい酷使したあとの痛みであれば、それは腱鞘炎かもしれません。
一方、「それほど酷使した覚えはない」「通常のパソコン仕事をしていた」などほんとに腱鞘炎なのと疑うケースまで手首や指が痛むと腱鞘炎と診断されてしまっていることがとても多いと感じています。手はもともと使うように出来ていますから、多少の酷使では故障しません。
腱鞘炎で間違いなければ、局所の炎症ですから、なるべく使わないようにしてそこの負担を減らすような治療をしていけばいいのですが、もし腱鞘炎でないとしたら、当然局所の治療をしていてもいっこうに改善されないという問題が出てきてしまいます。
腱鞘炎と言われたが、なかなか治らない、どうしたらいいの?という患者さんが多く来院されます。
「腱鞘炎のようで実は腱鞘炎でないものをどうしたらいいの?」禅問答のようですが、治療を受けても、一向に改善しない、長年悩んでいる方は腱鞘炎でないかもしれないと疑ってみる必要があります。
ではどうしたらいいのか?ですが、これは坐骨神経痛のページも参考にしていただきたいのですが、痛むところが悪いとは限らないと考えていくと意外に解決法が見つかることが多いものです。
坐骨神経痛では痛む場所、坐骨神経痛部分(下肢の後面)ではなく、腰の部分に原因を探してみると解説しましたが、今回の痛みの場所が手に変わっただけです。
考え方としては坐骨神経痛と同じです。痛む場所が悪いとは限らないと考えてみますと、腕に走行する神経はすべて頚椎から出て、手に分布します。
頚椎の5番~胸椎の1番ぐらいまでの椎間孔から出た神経がいろいろ名前を変え上腕~前腕~指に走行しているのです。
腱鞘炎の施術
足の痛み、坐骨神経痛は原因を探す場所は腰のように今度はその手バージョンですから、腱鞘炎の治療を受けても一向に治らない、手を休めても改善しないようなケースでは、首の治療、主に腕神経に問題点を探し、ここでの障害・問題が手の痛みとして出ていないか?を探っていけばいいわけです。
このとき気をつけなければならないことはひとつ、痛む場所の施術はとりあえずしないということです。
痛みの原因はどこかをつきとめて、そこを治さないことには症状は改善しないのですから、原因部分の特定がまず大切です。
痛む場所以外の前腕や首の治療、腕神経叢に原因部分を探し、施術をし、手の痛みが改善しないかをみていくことでその原因部分が絞られてきます。どこに痛みの原因がありそうか?を探すことが最初の一歩です。ここだという原因部分を特定でき、その部分を適切に施術できれば、症状は軽減してきます。ここだという、この一歩がはっきりすると治療の方向性が見えてくると思います。
ばね指について
手をよく使う方に多い症状ですが、これはまさしく腱鞘の炎症(腱鞘炎)であり、痛む場所に原因を探しにいっていい症状です(すべてではありません)医学用語では弾撥指(だんばつし)といいます。
ばね指になると、指を曲げた状態から伸ばすときにひっかかりを感じるようになります。
そのひっかかりの原因ですが、腱の炎症、腱鞘の炎症が起こり、その部分の腫れ、肥厚し、厚く腫れた部分が、腱鞘のトンネルを通るときに引っ掛かりが起こるというのが、医学的な常識なのですが、私はいままでの臨床経験からそのようは考えていません。
なぜなら、そのひっかかりをその程度にはよりますが、即座に解消できることが多くあるからです。もし、腱や腱鞘の炎症(腫れ)であるという説明が正しいのであれば、その場で、ひっかかりを解消できることはありえません。炎症というのは、捻挫などを考えてもらえるとわかりやすいと思いますが、くじいて、腫れている足首はすぐに治るものではありません。時間薬のように少しずつ炎症が引くのを待つしかないわけですが、このばね指に関しては、程度が軽ければ、瞬時にそのひっかかりをとることができます。
これはその部分をよく触診してみるとわかるのですが、引っかかる指の手のひらのところに小さな小石のようなものが出来ています。
これは一種の老廃物のようなものなのですが、この小石が腱鞘のなかを通過する一点、その一瞬で引っかかるのがばね指です。
その引っかかっている一点を通過してしまえば、痛みはないのですが、指は伸ばしたり、曲げたりしますときにその小石も移動します。そのたびに引っかかりますので、その部分の炎症を起こします。
なんで引っかかるのだろう?と疑問に思われている方も多いと思うのですが、腱鞘(トンネル)通過のその瞬間の引っかかりと考えるとイメージしやすいと思います。またその引っ掛かりの反復が炎症を引き起こし、痛みを起こします。
ばね指の施術
小石が引っかかるのはその腱鞘入り口の一点ですので、小石が引っかからない部分に少しだけ小石を動かすように治療します。
この症状の施術・どう治すかについては「ばね指のシリーズ」ユーチューブで詳しく説明してありますので、それらの動画をご覧ください。
この治療は一瞬ですが、手の平の痛みを伴います。また数回に分けて治療する必要があります。
とても原始的な方法ですが、ひっかからない位置にずらしてあげれば、引っかかりが少なくなり、痛みも軽くなります。
ひっかかりの反復が炎症を引き起こしますので、引っかかりがなくなれば、自然と炎症も治まり、痛みもとれてきます。