膝の痛み
膝の痛みについて
膝は大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)の3つの骨から構成されていています。大腿骨と脛骨の端は弾力性のある軟骨という部分で覆われ、骨と骨が直接ぶつからないようになっているほか、間には「半月板」というクッションの働きをする軟骨もあり、膝への衝撃を吸収する役目を果たしています。また膝周りには主に4本の靭帯で補強されており、複雑な構造をしている関節です。
膝の問題で多いのは膝の痛みと膝に水がたまるという症状です。痛む場所としては膝の内側が痛いという方が圧倒的に多いですが、痛みの出方は様々で、動かし始めが痛い、曲げる時が痛い、歩いていると強い痛みが突然びびっと走る、など症状の出方はいろいろです。また膝の力が急に抜けるなどの症状を訴えられる方もいらっしゃいます。
膝は慢性化してしまうと、完全に元に戻すのが難しい場所です。膝の症状は中年~高齢な方が多く、来院した時点ですでに何十年も経過していて慢性化かつ重症化している場合が少なくありません。痛みが出たなるべく早い段階で適切な治療をしていかないとだんだんと慢性化し、治りにくくなります。
もうひとつの膝に水がたまるという問題ですが、膝にはもともと潤滑油の働きとして関節液というものがあり、関節にとって必要なものです。膝に水がたまるという状態はこの関節液が正常時よりに多く分泌されてしまい、関節包に余計にたまってしまっているという状態です。ここに水がたまると足は腫れぼったくなり、膝が曲げにくく、痛みを伴います。
「水を抜くとクセになる」といわれますが、この関節液は普段から膝に存在し、膝を保護しているものです。これが多く出てしまうということは膝に何らかの負担がかかり、その負荷を減らすために水が多く出ていると考えるべきでしょう。
「何故水がたまるのか?」その原因を考えて治療せずに水だけ抜いても膝への負担、異常は解消されないわけですから、またすぐに水がたまってしまうことの繰り返しになってしまいます。
鼻かぜをひくと鼻水がでますが、なんど鼻をかんでも風邪が治るまでは鼻水も止まりません。この場合は風邪を治すこと=鼻水を止めることと普通は考えると思うのですが、膝の調子が悪い方のほとんどは、水のたまるその部分だけにしか目を向けません。
水がたまると痛いですからまず水を抜いてもらう、このこと自体は否定しませんが、なぜ膝の調子が悪いのか?その原因を探り、その原因をとり除くようにしていかないと、痛みが少し落ち着いたからといってまたそのままにしておけば、またそのうちに水がたまるということの繰り返しです。
「膝に水がたまる原因はどこか?」を探り、その原因をとり除くことで膝に水がたまらなくなるようにしていくというふうに考えなければいつまでも悪循環から抜けられません。
膝の痛みの原因
来院される患者さんの多くは「変形性膝関節症」と言われています。女性は閉経後ホルモンの関係で骨が男性に比べて弱くなるのが一般的です。関節の問題は女性のほうに多く見られます。
病院に行くと、膝のレントゲンを撮り、軟骨がすり減っている、骨棘が出ている、筋肉が弱っている、もう年齢的なものなどといわれている方は非常に多いはずです。
私は膝の痛みは次の3タイプに分類し、施術しています。
1) 痛みの原因が、膝以外の場所にある
怪我とかではなく、思い当たることなく痛くなったのであれば、比較的若年層に多いタイプの膝痛です。
膝を支配する神経は腰部から出て、膝に分布しています。膝の痛みを考える時、腰椎から出て膝周りに分布する神経の問題は避けて通れません。
スポーツによる怪我などは別ですが、若い方で膝自体の問題を抱えている方は少ないのですから、主に腰を中心に治療をしていきます。レントゲンでも特に異常はないと言われていることが多いです。
膝自体はあえて触らない、治療しないことが多いです。
③とは治療のアプローチが違います。膝自体は触らずに、原因と思われる腰中心に治療して、膝の症状が好転していかないかをみていくことで、原因部分が特定されてきます。
成長期に多いジャンパー膝は膝自体というよりも膝に付着している筋肉や腱の問題であることがほとんどですので、これは治しやすい症状です。
2) 膝自体が悪い。(靭帯や半月板などを傷めている)
検査で膝自体の問題が明白なときは外科的な方法のほうが適切なことが多いです。明らかな原因があり、痛みとの因果関係が明白なときは手術などが適応だと思います。
3) (1)(2)の原因が複合的にある
高齢者に多い膝痛です。高齢者の場合、さまざまなところの故障を抱えていることが多いですので、どこかひとつを治療して改善させていくということはできません。腰の問題、膝の問題、足首の問題、筋肉の問題などを総合的に考えながら、大きな問題から解消していくという治療が必要です。
膝が痛いからといって膝だけを治療したり、電気をかけていてもまず治りません。
膝の痛みの治療
どの治療も基本は同じなのですが、ここでも「何故膝が痛むのか?」「原因部分はどこか?」を探すことから始めます。「軟骨が減っている、年だから」と言われていても、老化とともに誰でも減っていますし、痛くないお年寄りもいるわけですから、それだけが原因とは言い切れません。
「ほかにも原因がないか?」つまり(1)~(3)のどれかの状態にないかということを探していくわけです。
原因部分が推測できれば、そこの施術をしながら経過をみます。
たとえば原因が(1)と推測できれば、治療する部分は腰や骨盤になります。膝の症状はその結果として出ているだけなので、腰の状態がよくなり、神経支配の問題が改善すれば、膝の痛みは自然と治っていきます。
原因が(2)とすれば、膝の治療をしますが、外傷などがない若い方の場合、たいてい①が原因のことが多いです。MRIなので膝自体に明らかな問題があるのであれば、外科的な方法を検討してください。
逆に高齢の方は、(3)のことが多いので、この場合は腰や関連する箇所の総合的な施術が必要です。
高齢者の場合、慢性化している場合が多いので、完全には治りきらないものが多いのですが、施術を続けていけば、完全には治らないにしても、症状は改善していきます。
変形してしまった関節やすり減ってしまった軟骨は元には戻りませんが、痛みが軽減し、生活に支障がない程度になればいい訳ですから、症状をいかに減らすかという点に重点をおきます。
「まあまあ、これぐらいなら大丈夫」という状態まで改善できれば、納得いただけるケースがほとんどです。