坐骨神経痛

坐骨神経痛(座骨神経痛)について

坐骨神経とは

坐骨神経とは、腰と仙骨部分から出る神経で、下肢の多くの領域を支配する大切な神経です。

次の図をご覧ください。 少し専門的になりますが、坐骨神経とは、腰と仙骨から出る神経の集まりで腰椎の4番(L4)から仙骨の3番(S3)までの神経の集まりで、脛骨神経という神経と総腓骨神経という神経がひとつになったものであることがわかります。

これら二つの神経の集まりが坐骨神経であり、この坐骨神経上に痛み、しびれなどの知覚障害、筋力低下が出ている症状のことを坐骨神経痛と言います。

 

病名と症状名について

「坐骨神経痛」よく耳にされる言葉だと思いますが、正しく理解されている方は多くありません。 坐骨神経痛とは、坐骨神経の走行上である殿部や下肢に痛みやしびれが出ている症状(状態)のことを指します。坐骨神経痛は病名だと思っていたという方が多いと思いますが、坐骨神経痛とは、殿部~下肢にかけての痛みがあるという症状名です。

神経痛には、坐骨神経痛をはじめとして、三叉神経痛、肋間神経痛などいろいろありますが、痛みの出る場所によって呼ばれる症状名であって病名ではありません。

そんな細かいことはどうでもいいと思われるかも知れませんが、坐骨神経痛を治療していくにはとても大切な部分なのです。

なぜなら、胃が痛くなり病院に行ったとしましょう。検査を受けた結果、胃潰瘍が見つかったとします。この場合の胃潰瘍は病名ですので、胃が痛んだ原因は胃潰瘍であることがわかります。その診断の上に原因である胃潰瘍に対しての治療法や処方箋が決まってくるわけです。(これは当たり前のことなのですが・・・)

ところが、坐骨神経痛の場合、「あなたは坐骨神経痛です」と言われた場合、それは病名ではなく、症状名ですので、「あなたは足が痛いんですね、そういう症状なんです」と言われているに過ぎません。足が痛んだその原因を探ることなく、痛み止め(ほとんどの場合、ボルタレンかロキソニン)を処方されたりします。

そうすると、薬を飲んで症状が落ち着く患者さんはいいのですが、それではうまくいかない、治らない、原因がわからないという問題を抱えた患者さんが必ず出てきてしまいます。

 

坐骨神経痛(座骨神経痛)の原因

坐骨神経痛にはその症状を引き起こす様々な原因があります。ここからが少しややこしい話なのですが、病院の検査で原因がわかる坐骨神経痛と原因がわからない坐骨神経痛にわかれます。

 

原因が特定される坐骨神経痛

検査で原因がはっきりする坐骨神経痛は代表的なものとして椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊柱分離すべり症、脊柱靭帯骨化症や内科的な問題などがあります。

なぜこれらが原因がわかる坐骨神経痛かといいますと、これらはどれもMRIやレントゲン、内科的検査など病院の検査でこれらの病気かどうかははっきりすることです。これらを原因とした坐骨神経痛であれば、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛脊柱管狭窄による坐骨神経痛というようにきちんとした診断がつき、坐骨神経痛という症状との因果関係がはっきりするわけです。

どんな病気であっても原因の特定、診断がついた上での治療になるわけですから、これらを原因をした坐骨神経痛はだれもが納得できる坐骨神経痛であるといえます。これらを原因とするものは、どれも治りにくいものなのですが、坐骨神経痛を引き起こしている原因だけははっきりしている点では安心です。

医学書やHPなどを見てみると、坐骨神経痛の原因として記述があるのはこれらを原因とするものばかりです。問題となるのは次の原因のはっきりしない坐骨神経痛の場合だと思います。

 

原因のはっきりしない坐骨神経痛

坐骨神経痛を持つ患者さんで多いのが検査をしてもよくわからない、はっきりした原因のない坐骨神経痛です。病院で検査をして椎間板ヘルニアなどと診断がされれば、ある意味しょうがない、あきらめもつくというものですが、原因がはっきりしない、なぜ痛いのかわからないのでは納得できません。

坐骨神経痛で病院を受診された方は腰のレントゲンやMRIを撮られた方が多いと思ます。では何故腰のレントゲンやMRIを撮るのでしょうか?それは足に分布する神経はすべて腰から出ていますので、「腰になにか問題があるのでないか?その結果として坐骨神経痛を引き起こしているのではないか?」と疑っているからに他なりません。

しかし、検査で前述のような病気、椎間板ヘルニアや分離すべり症、脊柱管狭窄症、あるいは内科的な問題などが見つからないと、原因がはっきりしない、なんだかよくわからない痛みということになってしまいます。

現代の医学の進歩は目覚しいものがありますが、データにでない、画像で確認できないと異常なしとなってしまうところが盲点で、この場合、目で見えない、実際手で触れ、触診をしないとわからない、ほんのわずかな歪みや傾き、筋肉の硬結、こんなことがと思うようなほんとうに小さなところに原因が隠されていることが多いのが、原因のはっきりしない坐骨神経痛です。

椎間板ヘルニアや分離すべり症などの腰椎部分での障害が殿部や下肢の症状を引き起こすことはよく知られていても腰椎の歪みや捻じれ、骨盤の傾きや歪み、筋肉の問題などから引き起こされる坐骨神経痛に関してはあまり注目されません。なぜなら、骨の歪みや捻じれの問題は、数ミリの問題なので、写りにくいということ、またそういう点は重視されないという理由があります。レントゲンで確認するのは、骨折していないか、変形がないかなどが主に診断されます。

骨格の骨組みの不整列や筋肉の問題がこれらの問題を引き起こしているケースはカイロプラクティックの臨床ではとても多いのですが、現代医学(整形外科)ではこれらを重視していないようです。世界ではこれらの問題はカイロプラクテックの適応範囲ですし、日本でも少数ながら整形外科医がカイロの治療院を開くなど少しずつ注目されてきているのはいいことだと思います。

検査で異常が見つからない、骨には異常はないなど原因がわからない坐骨神経痛は、骨格の問題、筋肉の問題から問題点がないか疑ってみる必要があります。

 

骨格の歪み、筋肉の問題からおこる坐骨神経痛

検査で異常が見つからない坐骨神経痛は、腰椎の骨の歪みや筋肉の状態などから問題点を見つけていかなければなりません。

ではその原因はどこにあるかが大切なわけですが、その原因は腰にあることがほとんどです。坐骨神経とは、腰椎や仙骨から出た脛骨神経と総腓骨神経の集まりが坐骨神経であることはすでに述べました。痛みがある、症状があるというのはどこかでの神経への障害があるわけなのですが、その障害箇所で一番多いのが、それら神経が出てくる空間、椎間孔という部分での障害です。

椎間孔とは、骨と骨との間に出来た空間で、その狭い空間の中を神経が通ります。その空間を通って出てきた神経が脛骨神経であり、総腓骨神経、つまり坐骨神経なのですが、この椎間孔部分周囲に問題があって、それが下肢に痛みやしびれを引き起こしていることが多いのが、骨の歪みからおこる坐骨神経痛です。

椎間孔は鼻の穴などの形づくられたものと違って骨と骨の間、隙間に出来る空間のため、骨のわずかな歪みや曲がりによってその空間が狭められてしまします。この神経の通り道である空間がきちんと確保されていることはとても大切なことです。

 

椎間孔について

図の骨と骨の間にできた空間が椎間孔です。この空間は可動性のある骨と骨の隙間にできた空間ですので、骨が傾いたり、回旋したりなどの歪みがあると神経の通り道である大切な空間が狭められてしまいます。特に腰椎の5番と仙骨で作られる空間は他の空間と比べ狭いという解剖学的な特徴があるため、腰椎の5番を原因とするものが多いです。

 

坐骨神経痛(座骨神経痛)の症状

坐骨神経痛の原因は腰にあると述べました。

腰に問題があるのなら腰も痛いはずだと思われるかもしれません。勿論、腰痛を伴うこともありますが、腰痛はなく、足だけ痛いというのも多く見られます。症状の出方というのは、人それぞれいろいろなケースがあります。

「腰はなんでもなく、足だけが痛い」、「痛みはなく、足にしびれだけ感じる」、「筋肉痛のようなはり感がある」「足がつっぱる」「膝が痛い」「お尻のところが特に痛い」、「踵がいたく、踏み込めない」「足の裏が痛い」など症状は様々です。椎間板ヘルニアから起きる坐骨神経痛は重度のものほど、ふくらはぎのうしろ、足の前側に痛みが出る傾向があります。

腰にも痛みがあり、腰から足に繋がったように痛みが出る、こういうケースでは患者さんご自身も腰から足までつながって痛いという実感がありますので、ご自分でも腰が悪いのではないかと薄々気づいて来院される方もいらっしゃいます。この場合は腰が原因とわかりやすい症例です。

もっとわかりにくいものとして、膝や踵など部分的に痛みがでることもあります。典型的な坐骨神経痛の症状(お尻から足にかけての痛み)であれば坐骨神経痛だろうとわかりますが、部分的に痛みがでてしまうと坐骨神経痛とすらなかなか推測しにくいのです。

すこしやっかいなケースですが、検査しても膝や踵には異常ないのであれば、私は坐骨神経痛の痛みがそこに響いているのではと疑ってみます。神経痛はところどころ飛ぶように痛みが出現したり、日によって痛む場所が違う、痛みが移動するという特徴もありますので、症状に紛らわされることなく、あくまでも原因部分はどこかを追究していくことが大切だと思います。

 

坐骨神経痛の痛みの出やすい箇所

いろいろな症状が出方があると述べましたが、典型的な坐骨神経痛の痛みは次の図のように出ます。

坐骨神経は膝の上までは坐骨神経という名の一本の神経ですが、これらは膝の少し上で脛骨神経と総腓骨神経とに分かれます。先ほど、脛骨神経と総腓骨神経の集まりが坐骨神経になると述べましたが、これがまた分かれ、下肢の違う箇所に分布します。おおもとの神経は坐骨神経であり、これら神経の走行上に痛みが出ても、脛骨神経痛とか総腓骨神経痛とは普通言いません。これらも坐骨神経痛としてくくられます。

脛骨神経はそのまま足の後ろ側(ふくらはぎ)へ分布し、総腓骨神経は足の前側に分布します。これら神経の走行上どこに痛みやしびれなどの症状が出てもおかしくありません。

坐骨神経痛の多くは足の後ろに痛みが出るのが一般的な坐骨神経痛症状ですが、膝から下に関しては、前側(弁慶の泣き所と言われる脛の外側)が痛かったり、なかには踵のあたりが痛む、足の裏が痛む場合もあります。

いろいろな症状があり、痛みの場所が移動したりするため、症状にとらわれると原因部分が特定されません。繰り返しになりますが、坐骨神経痛は症状名ですので、症状にとらわれることなく、原因部分はどこか?を探すことが大切です。

 

骨神経痛(座骨神経痛)の治療

原因となる疾患がわかっている坐骨神経痛

これらは、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊柱分離すべり症、脊柱靭帯骨化症、骨そしょうによる椎骨の変形などの病気が検査で見つかり、その結果として坐骨神経痛が出ている場合です。

どれもレントゲンやMRIで確定診断がつきますので、病院で一度しっかり検査を受けることが必要です。痛みの原因というのはいろいろな可能性があります。最悪の場合、腫瘍の骨への移転などもあるわけで、検査でこれらの病気でないかを否定する、その上で、筋骨格系の問題を疑うというのが基本です

これらを原因とするものは、どれも治りにくいものなので、患者さんのお体の状態、病気の程度などを確認しながら治療可能かを検討してみなければなりません。椎間板ヘルニアに関しては比較的予後は良好です。まずはお電話でご相談ください。

 

原因がはっきりしない坐骨神経痛

当院にいらっしゃる多くの方は、「レントゲンを撮ったけれど骨に異常はないと言われた、MRIを撮りヘルニアでもない」「痛みの原因がわかならい」というケースで来院される方のほうが多数です。

これらの病気が否定されている以上、他のところの可能性、腰椎や骨盤の状態に問題ないかをまず拝見します。

腰や骨盤の状態を拝見し、痛みやしびれを引き起こしているだろうと推測できる問題部分があるかどうかが大切になってきます。ここで何も原因として考えられる問題が見つからないのが一番困るケースです。逆におかしいところや可能性として考えられうることが見つかれば、その部分の治療をし、経過を見ていくことができます。どこか正常でない部分、痛みの原因として推測できるところ、その部分を探すことが治療への第一歩です。

 

治療→治療後の経過をみていくことが大切です

原因がわからないという患者さんの腰を拝見すると「たぶんここだろうなあ」という部分が見つかるのが普通です。なぜならば、なんの原因もなく痛みが出ていること自体おかしいことだからです。

ただし、その段階で100%確信できるわけではありまんせん。まだ推測の段階です。そこが原因として正しいかは治してみてその経過を観察していかなければなりません。病院でも原因がわからないものを「はい、ここです」とは言えません。

原因部分が推測できれば、その部分の治療を行い、痛みの変化を見ていきます。治療した箇所が原因部分として正しければ、足の症状はいい方向に変化していきます。治療→治療後の痛みの変化を確認していくことで、痛みを引き起こしている原因部分が特定されてきます。原因部分の推測→その部分の治療→症状の好転までもっていければ治療を続けることで多くの坐骨神経痛は解消していきます。

まれに梨状筋症候というお尻のところの筋肉の過緊張が原因ということもありますが、実際のところあまり多くない気がします。

 

坐骨神経痛(座骨神経痛)の治療期間

どんな症状でもどれぐらいで治るか?治療期間を予測することは難しいことなのですが、坐骨神経痛は症状名であるということはすでに述べました。

坐骨神経痛を引き起こす原因疾患は様々であり、その原因には、原因がはっきりしているものに、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊柱分離すべり症,、脊柱靭帯骨化症など、原因がはっきりしないものには、骨の歪み、捻じれ、傾きや筋肉の硬結などから起きているものがあるということもすでに述べたとおりです。

胃が痛いという状態にもその原因が単なる胃炎であるのと胃潰瘍であるのでは治り方がぜんぜん違うように坐骨神経痛もその原因がなにかによって治療期間、治り方はまったく違うということが言えます。

いろいろなケース、体の状態がありますが、あえて言えば、大きく分けて、原因がはっきりしていて診断がついているものと両方の足に同じように痛みが出ているケースのほうが治りにくく、逆に、片足だけの痛みや調べても原因がはっきりわからないと来院される方のほうが、治りやすい、どうにか対応できるもののほうが圧倒的に多いです。

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